感想記

おたくの備忘録

天気の子に殴られた

世界(大義)か相手かだったら前者を選ぶようなのが自カプのおたくなので、端的に言えば後者を選んだ少年のお話、に殴られました。
いや、すごかった。以下ネタバレ雑感。


平凡だけど行動力はある男の子が、特殊能力持ちの女の子と出会って、非日常な日々の中で恋をして、消えてしまう女の子の手を取るために走って走って、そうして世界を変える……という話の構成自体は君の名は。とそれほど変わらなくて、なのにこんなにも違う。
というか、逆なんだよな。
瀧くんが三葉ちゃんを助けることは、糸守の住人を救うことにつながって。
帆高くんが陽菜ちゃんを助けることは世界、もとい東京を沈めることにつながってしまった。
好きな子の手を必死に掴んだ、その結果が真逆なのが、何というか皮肉…。

私は君の名は大好きで、たきみつちゃん尊い;;;;って3年前なってた人なんだけど、天気の子は単純に感動できないというか肯定できなくて、何だかそれが大人になってしまったなあというもの悲しさがある…。
だからって帆高くんの行動と選択をとても否定できないけど、完全に寄り添うことは出来なかったなあって。
例えば自分が須賀さんの立場であれば、大人しくお家に帰りなさいと言うでしょう。つまらない大人ですね。別に“正しい大人”を糾弾する話でも何でもないんだけど、どうしてこんなに苦しくなるんだろうね。

もし舞台が東京ではない架空都市だったら、最初からファンタジーの世界だったら、こんな気持ちにならなかったんじゃないかと思う。
でもあまりに丁寧に、緻密に、きれいに描かれていたから……年に数回しか東京行かない地方民だけど、あっあそこ行ったことある!見たことある!ってレベルだったからさ……。
でもって描かれる人たちも普通じゃん。特に理由もなく家出した少年、弟を守りたいお姉ちゃんとませているようでまだ子どもの弟、うだつが上がらないライター、就活に悩む女性、晴れることを願う人たち、青空に笑顔になる子どもたち…。
あまりにも普通で、リアルで、世界観に引き込まれるとかではなくまるで現実と地続きのような気すらして、不気味の谷というか、そうしてリアルであればあるほど、穂高くんの選択の重みがあるよねっていうか……。
何だろう……隕石が降ってくるよりは豪雨で町が沈むという方がリアルというか、そういうこともあるんだってもう去年の災害で知っているからな……ただのフィクションだと浸れなかった、のかもしれないなあ。

いやあ物語としては帆高くんも、彼を手助けした夏海さんや須賀さんだってあまりに正しいんだけどね!
あそこで陽菜ちゃんの手を掴めなかったら、何のために出会ったのか、何の物語かもわからなくなってしまうもの!
でも舞台と結果があれだったから、素直に拍手出来ないねっていうねー…。

あとこれはただのカプ厨の呻きなんだけど、自カプ、相手より世界とりがちだから、そういう意味で何かつらかったってかぶん殴られたな。
陽菜ちゃんのためなら世界が狂ってもいいって言える帆高くんは強い、すごく強いよ。
若くて愚かだとか、美しいとかは言えないけど、ただ強い。
周りの人から責められなくても、あれは確かに自分の選択だと最後にハッキリと背負ってくれたところはすごくよかった。
何かクレイ(@プロメア)の「自分が決めたという意志がなければこの先生き残れない(あやふや)」みたいなせりふ思い出しちゃった。

ところで君の名はと世界がつながっているなら、この世界線(天気の子)のたきみつちゃんはあの雨の中ぶじ再会出来たんだろうかなあ。
逆に言えば、君の名は世界線の帆高くんは、陽菜ちゃんの手を取れなかったんだろうか…。

一緒に見ていた友人は、あんな雨止まなくても人々は力強く生きてるもんだねえって。それにもしかしたらあのあと雨止むこともあるかもしれないじゃん?って言ってて、それもそうだよな!?って。
友人と一緒に見られて良かったな、と思いました。
とりあえずもっかい見たいし小説版買う。